GARIBAN NIKKI #1

January 21,2019 /


僕たちは時間をかけて、ゆっくりと距離を縮めてきた。はじめの二、三年は物置の片隅に、ここ一年ほどは場所を変え、デスクのすぐ後ろに置かれたトランクケース大の木の箱。それは、何年か前に友人から譲り受けた「ガリ版」だ。引越しのため実家を片付けていたら見つかった、50年ほど前に山岳写真家の親父さんが仕事で使っていたものらしい。処分するのもなんだし、誰か貰い手は…という時に僕の顔が浮かんだらしい。その後、友人は沖縄へと旅立ち、いわばこの木の箱は置き土産となった。 パチンと留められたフタを開けると充満していたインクの匂いが広がった。中から出て来たのは、昭和45年発行の古びた新聞。メッシュが張られた木製の刷り台。インクがべっとりとこびりついたローラー。歯磨き粉のように絞りきったインクのチューブが2つ。最初は、それらの道具があまりにも謎めいていたので、見なかったことにして、ぱたっとフタを閉じてしまった。 それから暫くほったらかしにしていたのだが、ガリ版のことはずっと頭の片隅に残っていて、時折り小学校の頃の学級通信などに想いを馳せたりしていた。なかでも小学2年生の頃、近所のお兄ちゃん的な存在の担任教師が作る、ほぼ毎日発行されるイラスト多めの学級通信が好きだった。たぶん文字は全く読んでいなかったけど、眺めてるだけでも元気の出てくる筆跡はなんとなく覚えている。あのわら半紙の手触りと匂い、後ろの席に回すときに乾ききってないインクが手についたりとか。。当時は何とも思わなかったけど、手作業による印刷物は、僕らに文面以上の何かを届けてくれていた気がする。なんだか懐かしくなって、やっぱり自分でも何か作りたい!と思い立ち重い腰を上げてみようと思った。 調べていくうちに、箱の中に足りない道具があることに気づいた。鉄筆、ガリ版(ヤスリ版)、ロウ紙、あとインクだ。さっそく、近くの文具屋を当たってみたが「ガリ版」と言っても首をかしげられ、結局インターネットでガリ版の道具一式を取り扱う店(*1)を見つけ、まずはそこで購入した。 道具も一通り揃ったところで、ロウ紙をガリ版の上で削り、いざ試作に取りかかってみたのだが、なかなか上手く行かない。やはり50年振りに稼働させるには、気が早かったようで、よく見ると刷り台のメッシュが破れていたり、意外とふかふかした質感のローラーにインクの蓋がめり込んでいたりと、作業する段階になり、ところどころ劣化していることに気づいた。これはまず、道具のメンテナンスが必要そうだ。となると、また停滞してしまいそうなので、ここは、あえて目標を掲げておいた方がよいかも。ということで、次回か、そのまた次回の「ALL DAY MUSIC」(*2)のイベントのフライヤーはきっとガリ版で作ることをここに誓います! *1 岡本宿 *2 ALL DAY MUSIC
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Kosuke Maki

Kosuke Maki

1979年生まれ。「GAIMGRAPHICS」のデザイナー・イラストレーター。レゲエバンド「GARAGARA」ではギター担当。「ALL DAY MUSIC」では「COSTELLO」としてDJを始める。

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