FANTASTIC #19 "FLUTE"

July 27,2018 /

180726_fantastic_entry_top ゲオルゲの笛は高くついた。 僕がジプシーミュージックにハマっていくきっかけとなったルーマニアのバンド、タラフ・ドゥ・ハイドゥークス(以下タラフ)。タラフが日本でライブやるというので、期待に胸を膨らませまくって行った。それが2012年の9月30日。 タラフと一緒に出演していたのは、マケドニアのジプシーブラスバンドのコチャニ・オーケスター(以下コチャニ)、インド出身の女形のダンサー、クイーン・ハリシュ。 ライブはもう最高すぎました。ただ席が2階席だったから、ステージが遠くて、もっと近くで騒いで踊りながら見たかった。といってもホールのライブだったので、騒いでいるお客さんも少なかったけど。 そんなこともあり、何となく物足りなさを感じながらも席から立ち、ホールを後にすると、なんとエントランスにバンドの人たちが出てきて演奏をしていたのだ! 会場の人にしてみれば大混乱。物足りなさを感じてた僕としては、まさかの展開でぶち上ってました。もみくちゃの中でコチャニのホーン隊が演奏を続ける。 そんなサプライズな状況で一人の男が木製の笛と”¥5000”と書かれた紙を持ってうろうろしているのを見つけた。それがゲオルゲ・ファルカルだった。 ゲオルゲはタラフのメンバーで、フルート(縦笛)奏者だ。 ライブを見ていた時に一番心を打たれていたのがゲオルゲの笛だった。 タラフとコチャニが一緒になったバンドの総勢は20人以上。コチャニのほとんどはホーン隊。そんな中堂々と縦笛で存在感を示していたのがゲオルゲだった。 かっこよかった。きっとバンドの中でも出音の小さい楽器だと思うのだが、(ライブのPAさんのスキルもあって)全然ほかの楽器に負けない迫力で演奏をしていた。 そんなゲオルゲが笛を売っている。 誰かに買われたらいやだ。 「俺が買う!」 という一心で人込みをかき分けながらゲオルゲに近づき、笛を買うと身振り手振りで伝えた。 しかしその時僕の財布にはあのお札しかなかった、「ふん!釣りはいらねぇ!」とか思いながらそれを買った(そもそも釣りなんて絶対用意してないだろうし)。 ゲオルゲはそのお札をどのタイミングでちゃんと理解しただろうか。 とまあそれくらいにあがった一日だった。 買った笛は、全然吹き方がわからず、プピープピーいわせているだけだったので、その後長い間眺めるだけのモノになっていた。 最近ひさしぶりに吹いてみた。 なんとなく音を調べながら吹いてみたらドレミファソラシドが吹けた。ちゃんと吹ける笛だった。よかったよかった。 それから知ったのだが、ゲオルゲは2016年9月に62歳で亡くなっていた。
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MC・DJ・プロデューサー。 東京出身。音楽を中心に生活をしている。 LIKE THIS SHOPの店長。 トリカブトのMCとして活動していた時にgaimgraphicsと出会う。 2010年にgaimgraphicsに加入。 Hip Hopを軸にし、世界中のダンスミュージックをディグるバンド、「Dig Dynamics Hip Hop doo-dah Band a.k.a. DIG DEE」のリーダー。 チップチューンユニット「Super Stars」のMC。 「SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」のNO SIGHT役。 俳句集団「傍点」同人。 落語好き。 趣味は蒐集すること。 最近、DJの時はXXXSMALL、店長の時はアクツと使い分けている。

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