HAIKU HONYALALA Vol.15 BOURBON KOBAYASHI

February 24,2017 /

角川書店が発行する雑誌「小説 野性時代」で「野性俳壇」という俳句の投稿欄がはじまるという情報を得ました。しかもブルボンさんが本名で選者を務めるとのこと! 俳句ホニャララも15回目を迎え、初めて俳句に触れた方もそろそろウズウズしてくる頃なのでは? そんなYOU & YOU & YOU !!! ぜひこの機会に作句してみては? 投稿はこちらから。第一回目の締め切りは2/28(すぐじゃん!)、さあ急いで投稿だ! ちなみに、来月からは月末が締め切りだそうです。 (smallest)

ブルボン小林の俳句ホニャララ / vol.15

 ミッミッ私はミセス 今日もオシャレに餃子でパーティ〜でおなじみミセス3月号に、僕の俳句が掲載されている。 ……嘘である。いや、俳句が載っているのは本当である。嘘というのは、ミセスにはそんな歌はないということである。歌はないが「ミセス」という女性誌のロゴはなんか妙に印象的で、そんな歌みたいだ。 それも嘘だ。とにかく、ミセスは僕なんかとは縁遠い、主婦向けの雑誌である。 そのミセス三月号が「やってみませんか!俳句と短歌」と題うって、俳句の特集を組んだ。俳人の小澤實さん、句集も出している作家の川上弘美さん、女優で俳句を熱心にされているという小林聡美さんと僕の四人が、句会をしたのだ。 たまに、俳句って、そういう「呼ばれ方」をする。俳句と無縁の媒体で、決して敷居の高いものじゃないですよ、楽しいですよ。みたいな風で。もっぱら僕は「楽しいですよ敷居低いですよ担当」だ。 しかしミセスで驚いたのが「袋回し」をするということだった。 袋回しは句会の中でもかなり特殊なルールなのだ。 1・参加者は各自、袋というか封筒を一枚ずつ持ち、車座に座る。4人なら4通、7人なら7通の封筒が必要だ。卓上にはノートを切り刻んだ「短冊」をどっさり作っておく。 2・めいめい、その封筒に、お題を記入する。季語とか、そのとき目に入った単語などを。 3・「せーの!」で、題の書かれた封筒を隣の人に渡す。もらった封筒には、もちろん、題が書かれている。 4・一分とか三分、タイマーがセットされ、その制限時間で、封筒(袋)に書かれた題の俳句を作って、短冊に(無記名で)書き、封筒にいれる。 5・制限時間がきたら、短冊をいれた袋をまた、隣の人に「せーの!」で回す。 6・人数の回数これを繰り返す。最後は自分の出題の句を作ることになる。 というのが袋回しである。 超短時間で、即興で、たくさん作るという、鬼のようなルールだ。句会の初心者はたいてい、尻込みする(初心者じゃなくなると、いざ始まるとき「あぁ、袋回しね」と過剰に涼しい顔をしたがる者も)。 だいたい、通常の句会を終えて、二件目の居酒屋などで、酒の入った状態で余興でやることが多い。なにしろ一分くらいで作るから、めちゃくちゃな句になる。 しかし、ミセス三月号をめくってみると、そうめちゃくちゃでもない。このときの制限時間は五分だったのだが、だいたい皆、一つの袋に三句出している(無念にも僕は一題のみ二句提出)。 そのことを驚く人もいる。 五分で三句ってことは、一分二十秒で一句つくったってことでしょう? と。それも、たとえば 雪ふって寒過ぎるだろこんにゃろう みたいな句じゃない、もっとこう、ちゃんとした感じの句でだ。 一例を抜粋であげる。 高階のコーヒー甘し花待てる 小澤 啓蟄のコーヒーを碾くひびきあり 小澤 春だ把手がほしい今人生に 川上 春浅し3/4が眼鏡かな 小林 眼鏡さらに3Dメガネ着ぶくれて ボンコバ (「コーヒー」「把手」「眼鏡」あと「電気」の出題) これらが一分ちょっとで出来ているということについて、信じられないという人もいるが、分かる人にはすごく分かる。 例えば一句目。「高階のコーヒー甘し花待てる」はこうだ(以下、僕の勝手な想像です)。 封筒に書かれた「コーヒー」という題をみたときから、小澤は(呼び捨てにした方が句評の気分がでるので、そうする)コーヒーを「コー」と「ヒー」にすぐさま分けてしまった。 「コーヒー」を真ん中の7のところにおくとして、コーを前半の5に、ヒーを後半の5に振り分けて考える。意味や世界でなく、まず句全体の「韻」を揃えるのだ。 それでコーという音から「高層階」を表す高階という、普段ならあまり使わなそうな言葉が思いついた。一方のヒーは、ヒではなく「ハフヘホ」にスライドさせた。コーコーヒーヒーではちょっと調子がよすぎるから。 さて、コーヒーは季語ではない。高階もだ。つまり上と真ん中に季語が入らないのだから、下をハ行の「季語」にすることは確定、花が素直に浮かび、あと甘かったり花を待ったりで整える。 この間わずか一分二十秒で句にしたのだ(←『宇宙刑事ギャバン』の「蒸着」時ナレーション風に)! 結果、地上の花と語り手の間に垂直な距離のできる印象的な句になった。 まあ、勝手な想像ですが。 「啓蟄のコーヒーを碾くひびきあり」もお題を真ん中にして、カ行の啓蟄と、碾(ひ)くで挟んである。コーヒーの音をコーとヒーに分解させた、そのバリエーションだ。高階と逆で、上を季語で発想。一粒で二度おいしい(などというさもしい考えでは作ってなかろうが)。 川上の「春だ把手がほしい今人生に」は、五分間で三句出したうちの三句目だと思う(僕の勝手な想像です)。残り時間がない中、まずは季語(春)を言いきる。ただ出すのでなく言いきった。 つづけてすぐに把手を出し、つまりお題を「クリア」する。そのグルーヴに残りの語もゆだねた。把手のある部屋とかいうこまごました発想からそれらしく整えていくのではない。見直さない、ジャズでいうならライブもしくは一発撮りの語の置き方である。結果、把手句の中で最も強さを獲得し、一番切実な把手になった。これは袋回しでなければ生まれない勢いの句だ。 小林の(僕も小林なのだが、小林感がまるで本物だった!)「春浅し3/4が眼鏡かな」も現場でみたメガネ率の高さを素早く、普段の俳句作りではいわない平易な言葉で封じ込めた、超短時間ならではの句だ。算用数字での把握もここではむしろ面白い。 (上記、くどいですが僕の勝手な想像です) さて、拙句「眼鏡さらに3Dメガネ着膨れて」も、もちろん作者なので説明は容易だ。 出題の「眼鏡」はメ・ガ・ネ。たったの三音だ。俳句は五七五なので、つまり十七音だ。あと十四音もある! あと十四音「埋める」(さもしい発想)。 ここでいきなりつかぬことを聞くが、ミセスの(いや、ミセスじゃなくても)皆さんは朝、時間がないときにおかずが冷凍食品のコロッケしかなくて、ニキビだらけの息子の弁当箱のスペースがガランガランに余っていたら、どうするだろうか。 コロッケを倍、いれるだろう。 それと同じだ。眼鏡の題だからって眼鏡を一個しかいれてはいけないという法はないのだ! 「眼鏡『さらに3Dメガネ』」よし、これで何音稼げた? よし五七五のうち五七まではクリアできたじゃないか! あと適当に季語あてがってハイ「蒸着」(←「宇宙刑事ギャバン」だが、どこか中年太り)! ……と、こういうことを、僕は袋回しでなくても普段から常に思っている。おれんちの俳句冷蔵庫は常に空だ。だから常にやり繰り俳句だ。 ……僕だけ、ミセスじゃなくて「オレンジページ」だった。 しかしだ。あらゆる創作の、創作時間が分かる状態って少ない。たとえば 夏草や兵どもが夢の跡 芭蕉 という風に俳句=作品は書かれ、知られるわけだが、もしこれが 夏草や兵どもが夢の跡(01:30) 芭蕉 と書かれたらどうだろう。 袋回しを活字にして発表するのは、ほとんど上記のように書いて発表するのに近いことだ。読者は否応なくその作品生成時の、言葉の浮かんだ順、推敲までを想像して味わうようになる。変なの、でも面白い(重ねていうが、そんな表現の「発表」は、なかなかない)。 ミセス三月号、ぜひご覧下さい。

今日の俳句

  ボックスシーツは鳴り物入りにでなく大流行でもなく、だが広まった。スマートフォンのようにではないがそれ並にだ。目覚ましいものではない、ささやかなものに眼差しを向けることを俳句は奨励するが、それは大量生産される品にも同じくあるべきだ。 字余りは「時間」のモタモタ、間延びを表すのに効果をあげることが多いが、ここでは広さ(シーツの大きさ)も伝えている。藤野は作家にして、我が傍点が誇る怪俳人であるが、平和な句も魅力的だ。

野性俳壇 雑誌「小説 野性時代」で、ブルボン小林が(本業の名前で)俳句欄の選者を勤めます。一緒に選をするのはテレビ番組『プレバト!!』でもおなじみの夏井いつきさん。投稿はこちらから。

ミセス3月号 ミッミッ私はミセス 今日もオシャレに餃子でパーティ〜でおなじみミセスの3月号。 今回の俳句ホニャララで話題となっている特集が掲載されています。

三の隣は五号室 俳句ホニャララの作者が、本名で小説家デビューし、15周年を記念する第14作品集。 へんな間取りが生み出すブルース。 第52回谷崎潤一郎賞受賞作品。 春のお辞儀(ふらんす堂刊) 俳句ホニャララの作者が本名で刊行した第一句集「春のお辞儀」絶賛発売中。 最初で最後の活版印刷で限定発売。 俳句同人 傍点 2014年結成の俳句同人。主催(主宰にあらず)は長嶋有。 ツイッター上の言葉遊びをきっかけに、作家、漫画家、造園業、主婦、心理学者、学生、デザイナー、官僚など幅広い職種のメンバーが集う。句会では誰もが点数に拘泥し、逆選の応酬でギスギスと盛り上がる。 同人名の由来は、主催が傍点好きでやたら文章にふることと、俳句とは、それ自体が世界に傍点をふるような行いだというこじつけから。

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ブルボン小林

ブルボン小林

72年生まれ。「なるべく取材せず、洞察を頼りに」がモットーのコラムニスト。 00年「めるまがWebつくろー」の「ブルボン小林の末端通信」でデビュー。 常にニッチな媒体を渡り歩き、北海道新聞、週刊文春などのメジャー誌から、スウェーデンの雑誌やメルマガなどでも連載。 06年刊行の「ぐっとくる題名」(のちに中公文庫)は、広告業界やテレビ局の人間など、あらゆる「命名する」世界の業界人たちから絶賛され、ひそかな小ヒット。 現在は朝日新聞(関東と九州)、女性自身などで連載。小学館漫画賞選考委員。 その他の著書に「ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ」(ちくま文庫)、「ゲームホニャララ」(エンターブレイン)、「マンガホニャララ」(文藝春秋)など。 ブルボン小林 公式サイト

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